M&Aにおける新株予約権(ストックオプション)の重要論点

公開日: 2026.04.06

1.新株予約権(ストックオプション)とは何か 

新株予約権とは、あらかじめ定められた条件に従い、会社の株式を取得することができる権利をいいます。とりわけ、役員や従業員に対するインセンティブとして付与されるものは、一般にストックオプションと呼ばれています。 

近時は、優秀な人材の採用、創業メンバーやキーパーソンへのインセンティブ設計、さらには資本政策の一環として利用されることも多くなっています。 

2.新株予約権の設計で重要になるポイント 

新株予約権は、どのように制度設計されているかが非常に重要です。たとえば、いくらで株式を取得できるのかという「行使価格」、いつからいつまで権利行使ができるのかという「行使期間」、権利を行使するための「行使条件」などは基本的な検討事項です。 

これらに加え、一定期間の在籍や業績達成を条件とするベスティング、退職時や競業時の取扱いなども、実務上の重要な論点となります。 

設計が適切であれば、新株予約権は会社と役職員の利害を一致させる有効な制度になります。他方で、設計に不備があったり、将来のコーポレートアクションを十分に想定していない設計の場合、処理が難しくなることがあります。特に、組織再編や支配権の移転が生じる場面では、想定していなかった利害対立が表面化することもあります。 

3M&Aにおいて新株予約権が問題になる理由 

M&Aの場面で新株予約権が重要になるのは、それが潜在株式として、将来の資本構成に直接影響を与えるためです。対象会社に発行済みの新株予約権が残っている場合、買収後に権利行使がなされれば、買主が想定していた持株比率が変動する可能性があります。特に、買主が対象会社を完全子会社化したいと考えている案件では、この点にはより慎重な対応が必要です。 

また、新株予約権の保有者が創業者、役員、従業員のいずれであるかによっても、実務上の意味合いは変わります。経営陣に多く付与されている場合には、買収後の経営体制やリテンション施策とも関係しますし、従業員に広く付与されている場合には、制度全体の整理や代替インセンティブの設計が必要になることがあります。 

4.法務デューデリジェンスで確認すべきポイント 

法務デューデリジェンスでは、まず、新株予約権の発行が適法かつ有効に行われているかを確認する必要があります。具体的には、株主総会や取締役会の決議、募集事項、割当先、発行数、行使価格、行使期間、行使条件などの基本的事項を確認します。 

その上で、退職時の取扱い、相続の可否、組織再編時の扱いなど、個別の条項まで確認することが重要です。 

また、M&Aに伴って権利行使条件が加速する条項(例えば、支配権の移転が生じた場合に、本来は将来まで待たなければ行使できない新株予約権について、その時点で直ちに行使を可能とする条項)がある場合には、想定外の希薄化や金銭負担が生じる可能性もあります。そのため、法務だけでなく、財務・税務の観点も含めて横断的に検討することが必要です。 

5M&A契約上の対応 

株式譲渡契約などのM&A契約では、新株予約権に関する手当が必要になります。典型的に検討対象になるものは以下の事項です。 

  • 新株予約権の発行状況や内容に関する表明保証 
  • クロージング前における追加発行や条件変更の禁止 
  • 権利行使を制限する誓約 
  • クロージングまでに消滅・買戻し等の手続を行う義務 

また、クロージング時点で未処理の新株予約権が残る場合には、株式価値への影響を踏まえて価格調整条項や補償条項を設けることも考えられます。加えて、新株予約権の処理によっては保有者に税務上の影響が生じる可能性があるため、法務面だけでなく税務面も踏まえた設計が欠かせません。 

6.まとめ 

新株予約権は、M&Aの局面では、資本構成、取引価格、人材維持、契約条件に影響を与える重要な論点になります。対象会社に新株予約権が存在する場合には、早い段階で内容を正確に把握し、どのように処理するのかを検討しておくことが重要です。 

M&Aでは、発行済株式だけではなく、潜在株式である新株予約権まで含めて資本構成の全体像を把握し、法務デューデリジェンスと契約交渉の両面で適切に手当てすることが、後の紛争や想定外のコストを防ぐことにつながります。 

我々は、多数のM&A案件をサポートしており、法務デューデリジェンス、契約交渉、クロージング支援に加え、対象会社が発行する新株予約権(ストックオプション)への対応を含め、実務に即したアドバイスを提供しております。 

新株予約権を含むM&A実務についてご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせいただけますと幸いです。 

※本コラムは一般的な情報提供を目的とするものであり、具体的な事案に関する法的アドバイスではありません。個別のご相談等がございましたら、どうぞご遠慮なくご連絡ください。